通関士とは 前編

通関士はすごい

 弁護士、会計士、税理士、不動産鑑定士、司法書士などいろいろな士業があります。

 しかし、国内物流、国際物流を通じて

物流関係で士業と言えるのは唯一「通関士」だけです。

 しかも合格率が10%という難関国家試験です。

 

 しかしこの「通関士」、一般にはあまり馴染みがありません。

 国際物流や貿易関係に従事していない人の中には

通関士という言葉を聞いたことがない人が多いのではないでしょうか。

 では通関士とは何なのか、何をするのか、どうやったらなれるのか、

何人いるのか等々について話をします。

 

 

通関士制度とは

 通関士制度は、昭和42年に通関業法が制定された際に導入されました。これは、貨物の輸入のやり方が申告納税制度へ移行したのがきっかけでスタートしたのです。

 申告納税制度とは、輸入者が輸入貨物の関税を自ら税関に申告することで関税額が決まる制度です。輸入申告後は、輸入申告された貨物の関税額が正しいかどうか税関が確認し、間違いが無ければ申告時の関税額が納税額となります。

 この輸入申告書類等の通関書類が適正に申告されないと迅速な許可が行なわれなくなるため、通関業務に関する専門知識を有する専門家として通関士制度ができたのです。通関士は、原則として通関業務を行う営業所ごとに設置されなければならないことになっています。

 通関士試験に合格するということは、貿易関係の知識、すなわち通関業者はもちろんのこと、商社やメーカー等で輸出入業務を行うのに必要不可欠な知識を十二分に有していると言っても過言ではありません。

 通関士試験対策のための講習会には、就職のため試験に挑む大学生がいますし、主婦の方も受講されています。

 これから日本は、RCEPのような多国間FTAの締結が増えるでしょう。このような多国間連携が進むことで通関士資格の需要が益々高まってくることでしょう。また、通関士の知識がなければ、複雑なFTAに対応することができません。

 

通関士の業務は

 通関業法という法律で通関士の業務は規定されています。その第14条では「通関業者は、他人の依頼に応じて税関官署に提出する通関書類については通関士にその内容を審査させ、かつ、これに記名押印させなければならない。(抜粋)」とされています。つまり、税関に提出する書類は原則全て通関士が内容を確認しなければならないのです。

 現在、商業ベースの輸入申告では申告納税方式が取られていますが、申告内容が間違っていた場合に過少申告加算税等の附帯税が課される場合があります。これが加算されると本来よりも多い税金を納めなければならないので、関税率を決める際には慎重な判断力が求められます。

 一方、輸出の場合では本船や航空機の出港の時間が決められているため、それに間に合うように輸出許可を得なければならないという迅速性が求められます。

 このように、通関士の業務は慎重かつ迅速な遂行力が求められるのです。

 

通関士の具体的な業務を輸入申告の場合を例に時系列に記します。

①     輸入者から届いたインボイスの内容を精査し不備がないか確認します。

②     通常、輸入申告にはインボイスの他に船荷証券(B/L)や航空運送状(AWB)、海上保険料を証する書類、原産地証明書等が必要になるので、これらの全ての書類の整合性が取れているか確認します。また、原産地証明書に押印された印鑑の印影が正規のものか確認します。

③     関税法、関税定率法、関税暫定措置法ほか、各種法律に抵触していないか確認します。

④     実行関税率表から輸入関税率を割出します。

⑤     輸入関税額と輸入消費税額を計算します。

⑥     輸入申告書を作成し税関に輸入申告(※)します。

⑦     税関に輸入申告書を提出します。

⑧     税関から輸入許可を得ます。

 

 通関業務とは、まさに関税関係のエキスパートでなければできない業務なのです。

 

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