通関士とは 後編

通関士になるには

 通関士になるためには、国家試験に合格しなければなりません。これは、通関士として必要な知識及び能力を有するかどうかを判断することを目的とした、財務大臣が決定する問題により各税関長が行う試験であり、毎年10月に実施されています。

 この試験に合格した後、勤務先の通関業者の申請に基づいて税関長の確認を得た後に初めて通関士になる事ができます。

 

通関士試験

通関士試験の試験範囲は次の3科目です。

1    関税法、関税定率法その他関税に関する法律(※)及び外国為替及び外国貿易法(同法第6章に係る部分に限る。)

2    通関書類の作成要領その他通関手続きの実務

3    通関業法

※  「その他関税に関する法律」とは、具体的には次のものをいいます。

①   関税暫定措置法

②   日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う関税法等の臨時特例に関する法律

③   コンテナに関する通関条約及び国際道路運送手帳による担保の下で行う貨物の国際運送に関する通関条約(TIR条約)の実施に伴う関税法等の特例に関する法律

④   物品の一時輸入のための通関手帳に関する通関条約(ATA条約)の実施に伴う関税法等の特例に関する法律

⑤   電子情報処理組織による輸出入等関連業務の処理等に関する法律

 

通関士試験受験対策

 個人で勉強を行う方は、関税六法と過去問と対策本の3点セットが必須アイテムです。筆者もこの3つの資料で試験勉強を行いました。特に、六法は通関士試験のバイブルです。通関士試験には実務問題もありますが、実務を含めて法律の試験であるため六法なしでは試験勉強は成り立ちません。法律なので慣れないと読みにくいかもしれませんが、コツさえ覚えてしまえば簡単に読み込むことができます。

 また、(財)日本関税協会やその他の企業では、通関士試験受験対策講座や通信講座が開催されています。過去問については、(財)日本関税協会のホームページに過去17年間分掲載されています。

 その解説ですが、財務省で通関士試験の問題を作成していた講師陣が作成しているため信頼性の高い分かり易い内容です。また、この講師陣は(財)日本関税協会が行なっている通関士試験対策講座の講師も担当しています。末席ながら私(木村徹)も講師として分類他を教えております。

 

通関士は何人いるか

グラフは、通関士の人数の推移を表したものです。通関士と共に従業者の人数も記載しました。この従業者とは、通関士ではありませんが通関士を補佐するということで税関に届け出ている通関業務に従事する人です。

このグラフを見ると、通関士の人数は右肩上がりで増え続けています。ここから、通関士の需要が増加しているということが分かります。

今後、RCEPが妥結すると輸出量・輸入量共に増加すると見込まれています。つまり、通関士の知識の必要性が今以上に重要視されるということです。早めに試験勉強に取り組んで損をすることはありません。

縦軸(人数)  横軸(西暦)

 

試験勉強はいつから始めるか

 通関士試験は毎年10月に年に一回だけ行われます。自分一人でコツコツ勉強を行うタイプ、講習会で講師や仲間とともに切磋琢磨するタイプと各々勉強方法は違うかもしれません。いずれにせよ、今秋試験を受けるのであれば今から試験勉強を始めることをお勧めします。どの通関士試験対策講座も春先から開講することを考えたら、今直ぐに始めるべきでしょう。

 

最後に

 先に述べたように、合格率が10%という難関国家試験です。また、合格したからといって直ぐにその能力を100%発揮できるというものではありません。

 通関士への教育、通関業者の内部統制審査、FTA対策、税関による事後調査への対応などでお困りの方は「物流・貿易研究所」まで連絡ください。

 特に最近多い相談は、「税関の事後調査への対応」です。