自動車業界のサプライチェーンに異変が起こっている

NAFTAとは何か

 『NAFTA』、最近の報道でこの文字を見ない日はないというくらいメジャーな言葉になってきました。が、これが何かという事を知らない人が多いようです。簡単にいうと、

 『カナダ、メキシコ、米国間で協力関係を築き友好関係を強化しましょう。そして、お互いに調和ある発展と拡大に貢献しあいましょう』というものです。ただ、最近では友好関係が弱化しているように見受けられます。それは、米国のトランプ大統領が、貿易不均衡であるということを理由に、米国が今よりも有利になるようにNAFTAを見直すと言っているからです。

 

自動車メーカー

 NAFTAの動向によって、日本の自動車会社の生産戦略が大きく変わってきます。自動車の主戦場の一つは米国であり、最近では年間2000万台弱の新車が販売されています。ちなみに、中国では年間2000万台以上販売されています。

米 国で少しでも安く販売するためには、日本で生産するよりも米国で生産した方が良いでしょう。地産地消ということです。さらに、人件費を考えると米国の隣のメキシコに目を向けるのは当然です。そこで、自動車メーカーの多くは、メキシコに自動車の生産拠点を設けているのです。Tier1と言われている下請け企業も一緒にメキシコに進出しているのはこの業界の特徴と言えるでしょう。

 主な生産拠点は、メキシコのグアナファト州やアグアスカリエンテス州です。

 

マキラドーラ、IMMEX、PROSEC

 これらは、メキシコでの輸入優遇制度です。対象品目が決まっていますが、これらの品は一時輸入することで、輸入に係る租税の免除または繰り延べが行われます。また、メキシコの付加価値税である輸入IVAの支払いも免除されます。つまり、本来輸入時にかかる税金の納税が発生しないため生産コストをミニマム化することができるのです。これらの制度と、NAFTAの制度を組合せて利用することで、米国で販売する自動車をメキシコで安価に生産することが出来るのです。

PROSEC : 産業分野別生産促進プログラム

IMMEX  : 輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業振興プログラム

 

自動車のサプライチェーンの異変

 米国が言い出したNAFTAの再協議内容いかんによっては、今後、メキシコで生産された自動車を米国に輸入する際に高い関税がかけられる恐れがあります。

 それを考えてのことでしょう。トヨタは1100億円投資して2019年からメキシコでカローラを生産する予定でしたが、投資額を3割も縮小して年間10万台のピックアップトラックを生産すると決め、当初生産予定であったカローラは米国で生産することに変更したそうです。

 

自動車をどこで作るべきか

 ここで考えなければならないのは、FTAを利用してどこで生産すべきか、どのようにして決定すべきか、ということです。

 当研究所でも、Tier1のメキシコ向け自動車部品の輸出に2013年から携わっていますが、最近の米国の動向によっては戦略を見直さなければならないと思っています。しかし、自動車部品メーカーの場合自動車メーカーの動きに左右されるため、どのような動きにも対応できるよう複数の案を検討しなければなならいと考えています。

 

= おまけ =

無資格検査

 検査は、物流とは無関係なので専門分野ではありませんが、最近の報道を見ると、車の話をするとなると避けて通れないので一応触れておきます。無資格の係員による検査や証明書の発行が日産自動車で発覚し、その後SUBARUでも同様のことが発覚しました。それぞれ約40年前からと30年前から行われていたそうです。

 コンプライアンスを遵守するためには、社員全員が関連法規を知ることが重要であるということが、今回の事例で良く分かりました。この考え方は、製造も物流も同じです。

 

= お問合わせ =