報  復

 アメリカが日本に対して『報復』すると言っています。物騒ですね。とは言えそれは『報復関税』のことですが、では『報復関税』とはどんなものでしょう?

 

■ 税関のHPでは報復関税のことを次のように説明しています。(抜粋)

(1)WTO協定に基づいてわが国の利益を守り、その目的を達成するため必要があると認められる場合

(2)ある国が、わが国の輸出貨物又は通過貨物等に対して差別的に不利益な取扱いをしている場合

などに、指定された貨物の課税価格と同額(従価換算税率100%)以下で割増関税を課す制度であり、関税定率法(第6条)に定められています。

 報復関税は、原則として、WTOの承認を受けて課されることとなっています。

 

 つまり、今回の場合米国が、日本などが米国に対して不利益を与えていると主張しているのです。

 

■日本が米国に報復した

 力関係で言うと逆に感じるかもしれませんが、日本が米国に対して『報復』したことがあります。実際にどのようなことがあったか見てみましょう。

 

 以前、米国には『バード修正条項』というものがありました。

 これは、米国政府が米国の企業からの主張(訴え)を受けて、特定の国から特定の貨物が米国に輸入された時に、『ダンピング防止税』や『相殺関税』を課すものです。これらの特殊関税で得た税金は、訴えを行った米国内の生産者に分配されます。また、対象となった輸出国は米国へ輸出しにくくなります。

 関税率が高くなることで輸入が減るため、米国の生産者は国内での競争力が増すうえ関税の分配までしてもらえるという2度おいしいことがあったのです。

 しかし、これがWTO協定に違反しているということで、米国はWTOから勧告を受けていましたが、米国はこの勧告に従わなかったので日本などから『報復』されたというものです。

 ちなみに、日本などとは、日本のほかに、カナダ、メキシコ、ECです。

 

 次の表は報復関税を課した品目と報復関税の関税率です。最大で17.4%でした。

財務省資料

 

 現在、日本では関税率が17.4%のような高率なモノはほとんどありません。どれだけ高い関税率であったかが分かりますね。

 

■どんなものが報復されるのか

 現在、対象になるだろうと言われているのは鉄鋼とアルミニウムであり、最低53%の関税が課されるかもしれません。また、米国は、WTOが例外処置だとしている安全保障上の問題だと主張しているため、WTOの了解を得ずに発動することがあり得ます。

 これらの品目の場合、大きな影響を受けるのは、カナダ、ブラジル、韓国やメキシコです。