英国がEUから脱退したらサプライチェーンはどうなるのか

 英国がEUから離脱することをブレグジットと言いますが、その予定日である2019年3月29日が刻々と近づいています。

 しかし詳細は未だに決まっておらず、最悪の状態であるハードブレグジットになる可能性が高まっています。ここでは、ハードブレグジットになった場合にサプライチェーンや物流に起こり得る問題について、顧客と話している内容の中で一般的なものの一部を顧客の同意を得て記載します。

トラック

 英仏海峡トンネルは鉄道専用トンネルですが毎日5,000台のトラックが通行しています。どのように通行するかというと貨車に乗ってトンネルを渡るのです。現在は通関無しで通行していますが、英国がEUから離脱した日から通関が復活します。

 英国の港湾当局によると2分間足止めされただけで27kmも渋滞するそうです。

 通関手続きで時間がかかることを考えれば、足止めは2分ではすまないでしょう。するとどれだけの渋滞になるか想像することが出来ません。

通関

 EUを離脱すると、英国の国境では通関が必要になります。英国では5,000人の税関職員が必要だそうですが、未だ1,000人強しか増強できていないそうです。英国やオランダでも状況は似たようなものです。ブレグジットがどうなるか分からないのに、どこまで増強するかも決められないでしょう。国にも予算というものがあるのですから。

倉庫

 今、英国では空前の倉庫ブームです。倉庫の需要が高まり賃貸料が高騰しています。クリスマスシーズンが終了することで、本来であれば倉庫需要が一段落するところですが、ハードブレグジットを見越した企業が在庫を積み増しするために倉庫需要が高騰しているのです。各社ではどのくらい在庫を積み増すべきか悩ましいところですが、それを保管する場所が無いというのが現状です。

飛行機

 英国の空から飛行機が消えるかもしれません。英国の航空会社は英国がEUから離脱したらEUの空を飛ぶことができなくなるからです。EUの空だけではありません。英国は、各国と、オープンスカイ協定や2国間協定を新しく締結しなければなりません。しかし、そんな時間はないでしょう。

労働者

 単純労働者を擁する企業では作業員が大幅に足りなくなるかもしれません。物流作業もその一つです。

 なぜ労働者が足りなくなるかというと、現在、EU諸国の人は英国を含んだEU内ではビザなしで働くことができていますが、ブレグジットの日からは英国で急にビザが必要になる恐れがあるため、既に英国からの脱出を始めているからです。

 ちょっと考えただけでも、物流だけでもこれだけの問題点を挙げることができます。 これらの対策を全て行っている企業は、極々少数でしょう。全てが難しくても優先順位を付けたうえで早い対応を取ることが求められます。