ホワイト物流とは一体何なのか

最近お問合わせが多い「ホワイト物流」について説明します。

 

1 「ホワイト物流」推進運動

 これは、主にトラックドライバーの減少に歯止めをかけることを目的とした運動です。なぜドライバーにフォーカスしているかというと、ドライバーが減ることは物資を運ぶ物流が不安定になる大きな要因だからです。それに物流が不安定では経済の成長も期待できなくなります。

 そのため、次の運動を行うことを国交省が決めました。

[1] トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化

[2] 女性や60代以上の運転者等も働きやすいように、より「ホワイト」な労働環境の実現に取り組む

 そして、企業は、取組方針、法令遵守への配慮、契約内容の明確化・遵守、運送内容の見直し等を内容とする自主行動宣言を国交省(実際は、ホワイト物流推進運動事務局)に提出し実施することで運動に参加することができます。

 

2 「ホワイト物流」の見える化

 参加した企業は、ホワイト物流に参加していることを証明するための特別なマークを使用することができます。これは、「エコレールマーク」、「エコシップマーク」や、グリーン物流のロゴマークである「ロジ君とエコちゃん」同様に、国交省が得意なマーク貸与方式です。これらのマークを使用することで、運動に参加しているということが一目瞭然となり、他企業と差別化することができますし、消費者にもアピールすることができます。企業はこぞってマークを使いたがるでしょう???

 

3 なぜホワイトなのか? ドライバーの給与は?

 物流がホワイトではないからこそホワイトの推進なのです。では、ホワイトではない理由、つまりグレー企業とかブラック企業である理由はなんでしょうか。国交省は現在がグレーであるとかブラックであるとかは言っていませんが、物流の現状について次のように言っています。

  • トラックドライバーは、全産業平均と比較し年間の労働時間が約2割長い
  • トラックドライバーは、全産業平均と比較し年間賃金が約1割~2割低い
  • 全職業の平均有効求人倍率は約1.8倍ですが、トラックドライバーの場合は2.5倍と、ドライバーが不足している
  • 令和6年4月から、自動車運転業務に年960時間以内の時間外労働の上限規制が導入される予定

※ ちなみに、厚労省が言っている一般労働者の残業上限は年間360時間であり、労使が合意している場合でも年間720時間を超えない事となっています。トラックドライバーの時間外上限はこれよりも大幅に多いということになります。調べてみましたが、残念ながら960時間の計算根拠が見つかるに至りませんでした。

 

 ここから考えると、ドライバーの時間単価賃金は全産業より30%低いということになります。

 国税庁が公表している正規社員の平均給与(年収)は490万円(平均年齢46才、平均勤続年数12年)なので、あくまでも計算上の数字ですがトラックドライバーの年収は340万円ほどになります。ちなみに、高収入と言われている金融業や保険業の平均年収は610万円です。そして、電気・ガス・熱供給・水道業の平均年収はそれよりも高い750万円だそうです。これはトラックドライバーの2年分の給与よりも多いのです。

 

4 ホワイト物流で何が変わるのか

 このような環境下ではトラックドライバーの成り手がさらに減ってしまうということで、国がその対策として打ち出したのがホワイト物流推進運動です。この中で、荷主企業は、その対策として「荷待ち時間の削減」、「荷役の機会化」、「契約の書面化」などを行うことを促されています。

 何も対策を講じないよりは良いと思いますが、これで全産業との給与差である年間147万円の給与増になるとは思えません。推進運動をしても、まだまだ平均給与にすら届かないということであれば、トラックドライバーの減少を食い止めることはできないでしょう。最終的な対策としてはトラック運賃の値上になるでしょうが、国が直接的に値上げを推進することは困難ですから、トラックドライバーの待遇が人並みになるための改善は難しいようです。

 

5 ホワイト物流対策

 そうは言っても何か行わないことには何も変わらないので、まずはホワイト物流推進運動に参加すべきです。そのためにどうすればよいのか迷っている企業の方からのお問合せに対応しております。