小麦粉が店頭から消えた

 小麦粉は、現代の日本人の食生活に無くてはならないものです。パンや麺類、お菓子の材料になるため、たいていの人は毎日何らかの形で小麦粉を摂取していると言っていいでしょう。

 

小麦粉が店頭から消えた

 その理由は、家でお菓子などを作って楽しむといったコロナウイルスの影響による巣ごもり需要と、万が一の時に備えた備蓄の増加と言われています。

 このように需要と供給のバランスが崩れると、その商材を輸入しようと思う人はいつの時代もいるものです。医療用のマスクも同様です。マスクの場合CIP価額が約10倍になりましたが、輸入のタイミングが遅いことで不良在庫を抱えてしまった人もいることでしょう。

 しかし、マスクと違い小麦は基本的に輸入することは出来ません。

 

どのくらいの量の小麦が輸入されているのか

 年間輸入額        3000億円(2015年実績)

            輸入国    米国       50.8%

                          カナダ    29.9%

                          豪州       16.1%

                          他            3.2%

https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/anpo/pdf/yunyu_2016_c.pdf

 この額は輸入大豆とほぼ同じであり、トウモロコシや豚肉の半分です。

 

なぜ輸入できないのか

 米の輸入を政府が管理していることは良く知られていますが、小麦粉も米と同様に政府に管理されています。食糧法と言われている『主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律』で規定されているのですが、輸入できないことはありません。しかし、ビジネスとして輸入して利益を出すのは難しいでしょう。

 

同法第四十五条(麦等の輸入)(抜粋)

麦等の輸入を行おうとする者は、国際約束に従って農林水産大臣が定めて告示する額に、当該輸入に係る麦等の数量を乗じて得た額を、政府に納付しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

一 政府の委託を受けて輸入する場合

二 政府の買入れ及び売渡しに係る麦等を輸入する場合

三 国内の需給及び価格の安定に悪影響を及ぼすおそれのないものとして政令で定める麦等を輸入する場合

 

政府が輸入した後の小麦はどうなるのか

 政府は、輸入された小麦を民間企業に売り渡しています。その額は半年ごとに見直されます。現在の価格は1トンあたり約5万円です。小売されているのは1Kg単位の袋が多いので、その単位に合わせると一袋あたり50円ということになりますが、小売価格には、その額に運賃、小袋詰め作業、保管料、卸売や小売業への配送料、販売管理費に利益を加え販売価格としているから、この価格よりも高いのは当たり前というものです。

 ちなみに、ここ10年ほどの一番高い売渡価格は、平成20年10月期の7万円でした。

 

その他の法律

 小麦の輸入時には、食糧法の他に、『植物防疫法』、『食品衛生法』、『家畜伝染病予防法』、『JAS法』などの各種法律もクリアーしなければならないことを付け加えておきます。