通関業務を知らない人がいかに多いか

 今回のメルマガは、貿易に携わっていない人には面白くないかもしれません。

 なぜなら、通関に関する内容だからです。それも、通関の初歩の話ですので通関業務をよく知っている人も面白くないかもしれません。

 

通関の知名度が低すぎる

 なぜ「通関」の話をするかというと、「通関」という言葉を聞いたことがない人がいかに多いか実感したからです。

 かくいう私も、新卒で通関部門に配属されるまでは「通関」という言葉を聞いたことがなく、当然、何をするかも分かりませんでした。しかし、海外に遊びに行ったことがない人を探すことが難しいくらい、海外旅行が身近になった現代では、通関は身近なものなのです。

 

海外旅行と通関

 皆さんが海外から帰ってくる際、空港の最後の関門には税関職員がおり、帰国者の荷物に何が入っているかを確認しています。そして、運が悪ければスーツケースを開けさせられます。

 これが、通関であり、それを担っているのが税関職員です。

 

貨物の輸出入

 それと同様に、貨物を輸出するときや輸入するときは、必ず税関へ輸出入通関申告を行い、許可を得なければなりません。例えば、輸入許可を得ていない貨物を日本で使用、あるいは消費(使用)すると関税法で罰せられます。

 関税法第110条では、密輸出入を行った者は10年の懲役に加えて1000万円の罰金を科すとされています。未遂の場合であっても懲役と罰金が科されます。

 つまり、日本から輸出された貨物、そして日本に輸入された貨物は、必ず税関の許可を受けているのです。

 

どうやって通関許可を得るのか

 通常、貨物を輸出入する際は、通関業法第2条で規定された「通関業者」に通関業務を委託して税関に申告するのが一般的です。本来は、輸出入者が自身で申告すべきですが、通関は専門性が高く、かつ、法律を知っていなければ出来ないものなので、ほとんどの企業は通関業務に精通した通関士が所属している通関業者に申告を委託しています。

 

専門性が高い通関士

 貿易も物流の一つとして考えると、通関士は、実務系を除いた物流の中の唯一の国家試験です。しかもその合格率は約10%という、難解な国家試験の一つなのです。

 

 世界共通の商品番号「HSコード」

 輸出入申告の際、商品に番号を振らなければなりません。この番号がHSコード、あるいは統計品目番号と呼ばれているものです。

 例えば、焼肉屋さんで提供されているホルモンのHSコードは0504です。これは、世界のほぼすべての国が使用している番号であるため、通関を知っている人なら誰もが分かる共通言語であると言えます。しかし、その番号に首をひねる人が多いのも事実です。

 常識的な日本人の感覚を持っている人なら、番号の付け方を難解に感じるケースがあります。

 上記のホルモンがその一つで、ホルモンは食用に分類されていません。つまり、HSコードで考えると、皆さんは、食用ではないものを食しているのです。でもこれも、HSコードの成り立ちを知れば首をひねることもなく納得できることでしょう。

 

 それについては、公益財団法人「関税協会」が行っている通関士試験対策講座の講習会で説明いたします。残念ながら、本年の講習会はコロナウイルスの影響で取りやめとなってしまいましたが、来年お会いできることを楽しみにしています。