コンテナ船の事故

 ONE(Ocean Network Express社)の大型コンテナ船M/V「ONE APUS」は、中国の塩田港から米国のロングビーチに向けて航行しておりましたが、2020年11月30日にハワイの北西で時化に遭遇し、積み荷の多くが海中へ投げ出されたり、船上で横倒しになったりしました。ONEの情報によると、海中に投げ出された1816本のコンテナのうち64本には危険品が積載されていたとのことです。

 同船は、12月8日に神戸港に到着しました。今後、コンテナを降ろした後、原因の究明にあたるそうです。

「ONE APUS」は、2019年4月に竣工した、とても新しい船です。サイズは14,000TEU型で、ホールド内に18列×11段、デッキ上に20列×9段のコンテナを積載する事が出来ます。

 

コンテナ船の船腹減少

 本年初めからのコロナウイルスの影響により一時期貨物が少なくなったことが原因で、多くの船会社が船舶の解撤を進めたため、2020年のコンテナ船の解撤は350,000TEUになるであろうと言われています。

 ところが本船が少なくなったタイミングで景気が回復してきたため、現在では本船スペースが著しく不足し、bookingを受け付けることが出来ない本船も出てきています。このような状況に加え大型船が事故に遭遇したのですから、本船スペースはよりタイトになるでしょう。

 ONEからはまだ原因の公表はされておりませんが、本船スペースが足りないからと、無理をして沢山のコンテナを積載した結果起こってしまうような、人為的事故ではないことを祈るばかりです。

 

最近のその他の事故

 昨年の話ですが、2019年1月2日、アジアからドイツに向かっていた「MSC ZOE」が北海のオランダ沖で荒天に遭い、コンテナに荷崩れが発生して約300個のコンテナに大きな影響が出たという事故がありました。

 

事故対策

 船が動いているかぎり、事故は起きるものと考えた方が良いでしょう。事故に対して荷主が取れる唯一の対策は、海上保険の付保です。

 自分の貨物に事故が発生していなくても、共同海損の場合は他者の貨物の事故のために損害金を支払わなければなりません。一見理不尽のようですが、それが共同海損というものです。しかしそんな場合でも、海上保険を掛けていれば負担金の支払いから逃れることができます。

 

 私は商船学校出身であり、卒業前の1年間は航海実習のために船に乗っていました。幸い、これほどの事故に繋がるような時化に遭遇したことはありませんでしたが、荒天の時はドキドキしたものです。貨物が海に流されてしまったり、スケジュール通りに本船が航行できずに貨物の到着が遅れたりと、多くの方々が被害を被っていることと思いますが、人命には問題がなかったようなので、それが何よりです。

 

産経ニュース2020年12月8日から抜粋