税関の事後調査

 物流・貿易研究所への問い合わせの多くに、税関による『事後調査対策』があります。

 

事後調査の目的とは

 税関が事後調査を行う一番の目的は、輸入申告を正しく行っているかどうかを確認することです。

 『正しく行っていない』場合とは、『ほ脱』行為を指します。これは聞き慣れない言葉かもしれませんが、要は、関税と輸入時に納付する消費税の脱税です。

 税関は、納税申告が適正に行われているか否かを事後に確認し、不適切な申告が見受けられた場合はこれを是正し、適切に申告するよう指導するのです。

 輸出しかしていないという企業でも事後調査は行われます。その目的は、関税や消費税ではないことは明白ですが、では何が目的かというと、『関税法等関係諸法令』の規定に従って正しく輸出申告を行っているかを確認することです。

 ですから、やましいことをしておらず、そして正しく申告していれば、事後調査など気に病む必要はないのです。

 

税関が関税を決めているんだろ

 こう思っている方は、輸入申告に関して根本的に考え違いをしています。おそらく、事後調査で追徴される確率が非常に高いでしょう。

 なぜかというと、通常、貨物の輸入では『申告納税方式』が適用されるからです。これは、『自社の輸入貨物にかかる関税額は〇〇円なので、これを納付することで貨物を輸入しますよ』と、輸入者が税関に申告する方式です。つまり、関税額を決めるのは税関ではなく、輸入者自身なのです。多くの輸入者は、申告業務を通関業者に委託しているでしょう。しかし、通関業者が行っている申告イコール輸入者の申告なのです。したがって、納付した関税額に間違いがあった場合は、輸入者の責任になるということです。

 

事後調査のポイント

 大きく分けて次の3つに分けられます。

  1. 正しい課税標準の計算
  2. 評価申告
  3. 帳簿等の保存義務

 今回は、この中でも最も難解な『評価申告』について記載します。

 

評価申告

 簡単に言うと、インボイスに記載されている価格が課税標準として正しくない場合、正しい価格に直して輸入申告することです。ほとんどの人は、輸入時のインボイス価格が正しいと思っていることでしょう。しかし、以下のような事由により正しくないこともあります。その場合、事後調査で税関に指摘されて、過少申告加算税、無申告加算税、重加算税、延滞税などの附帯税を過去にさかのぼって納税しなければならなくなります。つまり、本来の関税額より多く納税しなければならなくなるのです。

  • 別払金

 インボイスに記載されていない費用のことです。輸出者に無償で提供した原材料や工具なども別払金の一種と考えられるでしょう。記載されていない価格分を調整したうえで課税標準を算出し輸入申告しなければ、関税や輸入消費税をほ脱(脱税)することになります。

  • 本支店関係

 本支店関係における取引では、本来の価格よりも低い価格で輸入している場合があります。その場合、正しい金額に補正して輸入申告しなければなりません。または、輸入価格が正しいということを証明して申告しなければなりません。

 

これが評価申告です。

 

評価申告の事例

 評価申告は、非常に複雑です。全てのパターンが個別であり、一つとして同じものはありません。

 例えば、日本関税協会から「関税評価303」という本が発行されています。変わった名前の本ですが、303種類の評価事例が解説されていることから、このような名前になったそうです。果たしてこの中から自分の事例と同じものを見つけることができるでしょうか?

 物流・貿易研究所では、そのためのお手伝いを行っております。