ニュージーランドはTPPの会合でなぜ怒ったのか? 前編

『TPP交渉とニュージーランドと酪農製品』

2015年7月にハワイで行われた環太平洋経済連携協定(TPP)の

閣僚会合は合意に至りませんでした。

その一番大きな理由は、ニュージーランド(NZ)が

自国産乳製品の大幅な輸入拡大を強硬に求めたからであると

報道されています。

NZは国土の広さが日本の4分の3ですが、

人口は約400万人しかいません。

これは日本の3%にあたり、福岡県の人口よりも少ないくらいです。

つまり、国内消費量が限られていることから

輸出に力を入れなければならないという構造になっています。

 

『酪農製品は、NZの全輸出額の32%を占めており』

171億5400万NZドル(2013年度)にものぼります。

輸出先は中国と東南アジアで全体の53%になり、

次は中東、そして米国(4%)、日本(4%)、

オーストラリア(4%)と続きます。

この数値を見ることでNZがTPP会合の際に

乳製品の輸入拡大を求めた先は、

米国、日本そしてオーストラリアであることがわかります。

 

『TPP交渉とニュージーランド』

NZからすれば、そもそもTPP交渉自体が面白くないことでしょう。

TPPには現在12ヶ国が参加していますが、

元をたどると2006年にシンガポール、ニュージーランド、

チリ、ブルネイが協定を締結したP4協定にさかのぼるのです。

しかし、最近のTPPの議案は米国のTPAに始まり、

日米交渉、米国主導の医薬品開発データの保護期間、

知的財産分野や日本のコメの市場開放が主になっており、

P4国がないがしろにされている状況です。

 

後から参加してきた国がTPPを我が物顔で扱い、

自国がやっと主張することが出来る番になって発言したら、

『NZのせいで合意できなかった』と言われたうえに、

会見の場で『TPPから離脱する考えは?』と問われたのですから、

かわいそうだとしか言えません。

 

貿易コンサルタント 木村徹