貿易系のセミナーの際に必ずする質問があります。
それは、「TPP11という言葉を聞いたことがありますか?」という質問です。
約4分の3の人の手が挙がります。
その次の質問は、「TPP11を知っていますか?」という質問です。
すると手が挙がるのは2割以下になってしまいます。
手を挙げた人に「TPP11とはどういうものでしょうか」と聞いてみると、
『関税が安くなる』、『米国が離脱した』、『EPAの一つである』という返答があります。
この方々は、新聞やニュースを良く見ているのでしょう。
しかし、TPP11のそれ以外の項目について知っている人は皆無と言っても過言ではありません。
そして最後の質問が、「『日EU・EPA』や、『RCEP』という言葉を聞いたことがありますか?」というものですが、これらを知っている人は、参加者の1割以下です。
なぜかと考えてみました。
まず、TPP11とは『関税が安くなる』、『米国が離脱した』、『EPAの一つである』という知識については、
新聞やニュースで報道する内容が、ほぼこの3つに限られているからです。
TPP11で決まっている項目は全部で30章にも上りますが、関税が安くなることに関する章は、そのうちのごく一部です。
その他の章では、「衛生植物検疫措置」、「貿易の技術的障害」、「投資」、「金融」、「政府調達」、「知的財産」、「中小企業」などが規定されているのです。
メディアの責任?
どうして、ほとんどの人がこれらを知らないかというと、メディアで取り上げられることが少ないからです。
メディアからすると、関税が安くなるという内容が読者や視聴者に最もインパクトを与えるから、そこを目立つように取り上げるのでしょう。逆に言うと、それ以外は読者や視聴者の興味を引かないとも思えます。
メディアは情報を提供する使命があるとはいえ、読んで或いは視聴してもらわない事には情報発信する意義がなくなるというものです。ですから、読者や視聴者が興味をそそられる、『関税が安くなる』というキーワードにどうしても偏りがちになってしまうのでしょう。
では、牛肉は、一体いくら安くなるのだろう?
牛肉の関税率は、段階的になりますが30%ほど低くなります。
「では、1000円で販売されている牛肉パックがいくらになるでしょうか?」という質問もセミナーで行います。
5つほどの選択肢から選んでもらうのですが、正しく答えられる人は、ほぼ0人です。
国際物流業者の団体で行ったセミナーでも、正しく答えられる人は少数でした。
プロが分からないのですから、一般の人が正しい答えを導き出すことは無理というものでしょう。
解答は、文章で書くと背景の説明や計算の説明等で長くなるため
私のセミナーに参加するか、セミナー参加者に聞いてください。
メディアには、関税率削減割合だけではなく、実質的にいくらになるかという情報を
しっかりと国民に伝えていただきたいものです。
また、こだわりを持って言うと、「関税が安くなる」ではなく、「関税率が低くなる」と覚えていただければと思います。
日EU・EPAとRCEP
これらについては、いつもいつも、知名度の低さに不本意な思いをしています。
これらを簡単に説明すると、日EU・EPAは日本とEUの、そしてRCEPはアジア版のTPP11です。
RCEPの規模はTPP11より大きく、世界人口の半分が関わるほどです。GDPでは世界の30%にもなります。この大型EPAは年内妥結を目指していますが、メディアで取り上げられる機会がTPP11と比べて著しく少ないのが残念です。
TPP11よりも日本に大きなメリットをもたらす、これらの大型EPAにもう少し目を向けてもらうことが出来ればうれしいのですが。
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