「USTR」と「NTEレポート」。
これらの言葉を初めて聞くという人は多いことでしょう。
「USTR」とは米国通商代表のことであり、米国の通商政策全般を担当する
大統領の直属機関で、各国との通商協議などで米国を代表します。
TPP交渉で米国側の代表として活躍していたフロマン氏はオバマ政権下での
USTRの代表です。
また、「NTEレポート」とは、USTRが毎年3月末に発表する
「外国貿易障壁報告書」のことです。 参照 https://ustr.gov/
このNTEレポートには、米国のモノ、サービスの輸出、米国民による直接投資及び
知的財産権の保護に影響を与える「外国の貿易障壁」が取り上げられています。
こうした障壁には、米国がモノとサービスの国際的な取引を規制したり、妨げたり、
阻害したりしていると考える、日本だけではなく世界の主要国の外国政府による
措置や政策が含まれています。そして、そこには次の項目が記載されています。
(1)輸入政策
(2)基準、試験、ラベル、認証
(3)政府調達
(4)輸出補助金
(5)知的財産権保護の欠如
(6)サービス障壁
(7)投資障壁
(8)反競争的慣行
(9)電子商取引に影響を及ぼす貿易制限
(10)その他の障壁
日本の対外政策は米国による内容が多いため、NTEレポートを読めば
数年後の日本の対外政策が分かります。過去のNTEレポートを見ることで、
これがどれだけ日本の貿易政策に影響を与えたかを見てみましょう。
次に、2013年レポートを抜粋しました。また、その一部について
簡単なコメントを記載しました。これらのいくつかには、
日本独自の政策と思っていたものもあるのではないでしょうか。
しかし、その多くは、米国の意向に基づいたものであった
ということが分かると思います。
次期米国大統領は就任直後にTPPからの離脱を表明する
と明言しています。また、それに代えて2国間協定を進める
とも言っています。2国間協定の場合、日本はTPPよりも厳しい条件を
突きつけられることは間違いないでしょう。
(1) 牛肉輸入制度
レポート:
「米国から日本に輸出される牛肉は20か月齢以下のものに制限されていた。」
木村コメント:
日本は2013年2月1日から30か月齢以下の牛肉を輸入することが
できるようになった。また、日本は米国から輸入される牛肉及び牛肉製品の月齢
制限を30か月齢より更に引き上げることについて検討している。
(2) コメ輸入制度
レポート:
「日本の極めて規制的で不透明な輸入米の輸入・流通制度が日本の
消費者の輸入米への意味あるアクセスを制限している。」
木村コメント:
TPPでは、コメは日本のセンシティブ品目として掲げられていましたが、
SBS方式を用いることで輸入枠が最大7万トン拡大されました。
(オーストラリア分も含めると8万トン)
しかし、日本人のコメ消費量は毎年8万トンづつ減少しています。
参考:日本の将来が書かれている「USTR」の「NTEレポート」 後編