コカ・コーラ
2017年6月7日の日経新聞に次の記事が載っていました。
「コカ・コーラボトラーズジャパンはキリンホールディングと業務提携を模索している」
「米コカ・コーラ本社とキリンホールディングは本年2月に資本提携を断念したが『物流や調達の分野での協力を目指す』」
「今後、両者はお互いがウィンウィンになるように、得られる利益を公平に共有する枠組みを整理するため、早期に具体的な交渉を行う」
飲料種類の違いもありますが、コカ・コーラとキリンの両雄が手を結ぶようなことは、一昔前では考えられなかったことです。
コカ・コーラは美味いのか?
キリンがコカ・コーラと今回なぜ物流分野で協力を目指すのかを見てみる前に、そして、コカ・コーラと取り組むことでどのような良いことがあるのかを知る前に、
ここ数年のキリンの動向を見てみましょう。
2011年
キリンとアサヒは共同配送をスタートさせました。お互いに競合しているにもかかわらずです。
その理由をキリンはHPで次のように言っています。
「両社は、物流部門での環境負荷の低減および、一層の業務効率化を目指した協働取り組みを8月から開始します。その内容は、東京都の一部エリアでの小口配送の共同化と、茨城県・埼玉県・長野県・静岡県の4県で空容器の共同回収です。
これにより、年間合計約196tのCO2排出量を削減します。これは、杉の木15,075本分に相当します。」
HPでは、環境のことをアピールしていますが、当然、大きなコスト削減が望めたのでしょう。それがなければ、競合同士が手を結ぶことはなかったと思います。
2015年
前回の2社にサッポロを加えて、東京都の一部エリアで小型車配送の共同化を行うことにしました。これは、3社の拠点を相互活用拠点とすることで、東京都の一部小売店に対して、ビール・洋酒・ワイン・焼酎や清涼飲料水などを共同配送するというものです。
これによって配送距離の短縮・積載率が向上し、3社合計で年間137tのCO2排出量が削減可能だそうです。
CO2削減が謳われていると共に、配送効率が高まるとも言っています。しかし、コストが削減されるとは言っていません。コストの事を言うのは、企業イメージに良くないということでしょうか。
2016年
キリンとアサヒは、また、新しいことを始めました。
「環境負荷の低減とトラック不足等の社会的課題の解決を目的に、石川県金沢市に共同配送センターを開設し、関西エリアの工場から鉄道コンテナによる共同輸送を開始します。」とのことです。ちなみに、配送センターは日本通運が運営し、JR貨物が関西~北陸間を輸送するそうです。
今回は、前回よりもだいぶ大胆な取り組みです。なぜかというと製造工場を変えてしまったからです。今までは愛知県や滋賀県にある工場で作った飲料を200~300Km離れた北陸までトラックで配送していましたが、この取り組みに合わせて関西地区の工場で製造した飲料を供給することにしたのです。
今回の理由は、環境に加えてドライバー不足が加わりましたが、ここでもコスト削減のことには一切言及していません。ちなみに、年間2,700tのCO2排出量が削減可能だそうです。
ここまでの取り組みで名前が出てきていない、ビール業界で有名なもう一社であるサントリーはどうしているのでしょう?
2017年
アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーは、物流部門での環境負荷の低減および長距離トラック輸送の削減によるドライバー不足への対処を目的に、北海道の道東エリアの一部(釧路・根室地区)において共同物流を行うことになりました。
今回の共同配送スキームは、原則として1社1届け先で10トン車以上の単位にならない荷物を対象とするそうです。ちなみに、この取り組みによるCO2排出削減量は年間330tだそうです。
コカ・コーラは美味い
ビール業界内でがっぷりと取り組んだキリンは、飲料業界の雄であるコカ・コーラとの取り組みを始めるそうです。きっと大きなコスト削減を目論んでいることでしょう。
また、社会のためにCO2をもっともっと削減してくれることを期待します。
共同配送は簡単か?
共同配送は得てしてうまくいかないものです。特に同業者の場合は、競合相手がどこのお店にどれくらい卸しているのかが分かってしまうからです。そのような中で着実に成果を上げているキリンの取り組みは素晴らしいといえるでしょう。
今の時代は、『環境』、『運転手の人手不足』が叫ばれているため、共同配送を行うには最適な社会環境であると言えます。
しかし、それをまとめるのは相当大変です。
だからこそ、外部の知識と助けが必要だということです。
共同配送への取り組みを検討する際には、物流・貿易研究所へお問い合わせください。