トラックの積込料と待機料が別立てになる?

トラック運送約款とは何だ?

 「トラック運送約款」を読んだことがありますか。

 おそらく、そんなものは読むことはおろか、聞いたこともない、という人が多いのではないでしょうか。それどころか、そもそも約款ってなあに???という人もいるかもしれませんね。

 ちなみに、「約款」を辞書で引くと『契約や条約などで取決められている条項』とあります。

 つまり、約款とは契約条件なのです。「トラック運送約款」は名前の通りトラック運送に関するものだと想像がつくことでしょう。同じように、倉庫に関するものでは「倉庫寄託約款」があります。

 両方とも、国土交通省が標準約款を定めています。日本全国に約22万社の運送事業者がおりますが、そのほとんどがこの標準約款を使用しています。標準ではないものを使用している運送事業者もいますが、それは一部の大手運送事業者です。しかし、彼らが使用しているのも標準とほぼ同じものであるため、運送事業者の全てが標準約款を使っていると言っても良いでしょう。

 

運送約款には何が書いてあるの?

 運送約款に書いてあることを見てみましょう(抜粋・要約)。

 恐らく、こんなことが書いてあるとは知らなかった、ということばかりでしょう。

■ 引渡期間 :

  • 発送期間 -  貨物を受け取った日を含め2日
  • 輸送期間 -  運賃及び料金の計算の基礎となる輸送距離170kmにつき1日。
  • 集配期間 -  集貨及び配達をする場合にあっては各1日

■  引受拒絶 :

  • 運送の引受けを拒絶することがあります。
  • 当該運送の申込みが、この運送約款によらないものであるとき。
  • 当該運送に関して申込者から特別の負担を求められたとき。

■  荷造り :

  • 荷主は運送に適するように荷造りをしなければなりません。
  • 貨物の荷造りが十分でないときは、荷主に必要な荷造りを要求します。

■  運賃、料金等の収受方法 :

  • 貨物を受け取るときまでに、荷送人から運賃、料金等を収受します。
  • 運賃、料金等の額が確定しないときは概算額の前渡しを受けます。そして、運賃、料金等の確定後、荷送人に対して、その過不足を払い戻し又は追徴します。

■  車両留置料 :

  • 車両が貨物の発地又は着地に到着後、荷送人又は荷受人の責により留置された時間(含む、積込、荷卸時間)に応じて車両留置料を収受します。

■  中止手数料 :

  • 運送の中止の指図があった場、中止手数料を請求することがあります。ただし、貨物積込前日までに中止をしたときは、この限りではありません。
  • 中止手数料は、次のとおりです。

積合せ貨物の運送にあっては500円

貸切り貨物の運送にあっては3,500円か2,500円

 

待機時間は何時間なのか

 国土交通省が運送事業者に行った調査によると、運送事業者の3割が積込料や待機料を荷主から得られていないそうです。しかしどう考えても3割というのはおかしすぎるでしょう。どのような調査が行われたのか知りたいところですが、これは3割ではなく9割超が正しい数字ではないでしょうか。

 同様に、平均待機時間は1時間45分だという調査結果もあるそうです。これは、業態によって差があるでしょうが、これはいくらなんでも待たせすぎと感じます。

 これらの調査結果から、7割の運送事業者の運賃等の中には1時間45分の待機料が含まれているということになります。ということは、荷主努力によって待機時間を0分にすれば、その分の運賃が安くなるということになってしまいます。運送事業者はそれでいいのでしょうか?

 アンケートに正確に答えないと、自分の首を絞めることになりかねません。

 

これから変わるトラック輸送

 恐らく、日本で動いているトラック輸送のほぼ100%が、「待機、荷造り、積込、検品、棚入れ」のいずれかの作業を実際の運送に付随して行っていることでしょう。

 トラック運転手を初め、運送会社の管理職でさえ、しっかりと運送約款を読んでいないのが実情です。どの業務や作業が約款に記載されているか、行うべき作業は何か、行わなくて良い作業は何かを、ほとんどの人が理解していません。

 もし知っていたとしても、『この作業は約款に書いていないので、やりません』などと言った翌日からは永遠に仕事が回ってこないことでしょう。

 このような弱い立場の運送事業者に日の光を当てようという取り組みがあります。

そ の内容は、『待機時間、積込料』を料金メニューにしっかりと記載しようというものです。

 これは、2017年7月に公布されて2017年10月に施行されます。

 また、『約款に従わない場合は国土交通省が業務改善命令を出す』ということになっています。

 しかし、これは小型トラックには適用されないため、全国の75%を占める軽自動車で運送を行っている人には適用されません。

詳しくは、物流・貿易研究所へお問い合わせください。

 

ドライバーも大変だから

 トラック運転手の拘束時間は非常に長く、法律はそれを容認するような規定になっています。その上、業種毎の給与レベルも下から数えたほうが早いです。

 そろそろ、私たちは運転手にもっともっと寛容になって、日の目を見せてあげても良いのではないでしょうか。

 

標準運送約款の種類

標準貨物自動車運送約款

標準宅配便運送約款

標準引越運送約款

標準貨物軽自動車運送約款

標準貨物軽自動車引越運送約款

標準霊きゅう運送約款

標準貨物自動車特定信書便運送約款

標準貨物軽自動車特定信書便運送約款

 

標準倉庫約款の種類

標準倉庫寄託約款(甲)

標準倉庫寄託約款(乙)

標準冷蔵倉庫寄託約款(甲)

標準冷蔵倉庫寄託約款(乙)

トランクルーム標準約款