世の中、物流の専門家ばかりではないので物流の基本事項から書きますが、物流費の大半を占めているのは運送コストです。
その比率は物流コスト全体の60%にも上ります。つまり、物流コストを年間5億円かけている企業では、そのうちの3億円が運送コストなのです。
いつも物流セミナーでお話していることですが、運賃のコストダウンは、もう望めません。今までは、ほとんどの企業が力関係を武器に運送会社へトラック運賃の値下げ要請し続けてきました。それは、62,000社を超える運送事業会社がいるということで、いくらでも替えがあるからです。ちなみに、運送事業者数は微減傾向にありますが車両数は増加しており、現在約140万両の車両が緑ナンバーの営業用車両として登録されています。
平均すると1運送事業者あたり23両持っているという計算になりますが、実際には10両以下の運送事業会社が30,000社を超えています。つまり、そのほとんどが小規模零細企業であるということです。そのため、今ある顧客を逃すと企業の存続が難しいので、顧客からの理不尽ともいえる厳しい要求にもYESと言い続けていました。
ところが、昨今の運転手不足という状況により運送事業会社の力が強くなりつつあります。しかし、運賃アップを勝ち取ったという声は大規模若しくは中規模の運送事業会社からしか聞こえておらず、小規模零細企業では厳しい運賃を強いられている状況がまだ続いているようです。しかし、各種メディアの報道からも分かるとおり、今後運賃が上昇することは間違いありません。
その対策をどうすべきか。
今般、日清食品が大きな決断をしました。
それは、『中一日運送』です。
これは、受注日の翌々日に配送するというものです。
この取り組みによって日清食品はドライバーの積込時の待機時間を3時間削減することが出来るそうです。これがどれほどの効果をもたらすかを見てみましょう。
日清食品の年間流通量 : 240,000トン
車両数(10トン車換算) : 24,000両/年間
年間総削減時間 : 72,000時間
これを、年間1,800時間労働で考えると、年換算で40人分の削減になり、年収500万円で計算すると年間2億円の削減になるのです。
ちなみにこれは、積込時間の短縮分のみの削減額です。
物流センターでの作業の均質化も望めるでしょうし、残業削減にもなるでしょう。このことから、物流費の削減額はもっと大きくなります。
現在、ほとんどの企業は受注当日に出庫・トラック積みを行い、翌日配送というスケジュールを取っています。その上、受注締め時間を後ろ倒しすることが顧客へのサービス向上とされています。
『中一日運送』を現在のサービスレベルと比較した場合、顧客が不利益を感じることは間違いありません。また、顧客の在庫も増加します。これらのことから、商品力が無い企業ではまねすることは難しいでしょう。
今後ドライバー不足が逼迫することは間違いありません。今、運送対策を取らなければ大変なことになります。それは、注文があるのに配送できないという状態です。
物流・貿易研究所では、最近、運送改革の引き合いが増えています。日清食品が行っている取り組みの導入も含め、少しでも早く対策を講じるべきです。