中国はそんなに悪どいのか
最近の新聞で、「一帯一路」の記事を目にしない日はありません。
その記事の多くは、「中国は『一帯一路』を利用して軍備を増強しようとしている」若しくは、「中国は周辺国にお金を貸し付け、返済できなくなった利権を手中にし、そこで得た港の権益を『一帯一路』に組み込んで、海軍基地を作ろうとしている」というものです。なぜかこのようなネガティブな記事しか目にしません。
それが事実かどうか、また、それが良いか悪いかということを話したいとは思いません。
ここでは、ポジティブな視点で、かつ、ロジスティクスの視点で「一帯一路」を考えたいと思います。
コンテナ船と航空貨物
コンテナ船で日本からHamburgまで往復すると、航路にもよりますが70日以上かかります。つまり片道で35日ということです。
SCM、SCMと唱えながら、工場でどんなに早くモノを製造しても、海の上で35日間保管されるのです。これを洋上在庫といいます。
これに、海上輸送前後の通関日数や、積載・荷卸しを含めると都合50日ほどが洋上在庫であると考えなければなりません。
キャッシュ・コンバージョン・サイクルで考えると、ありえない話です。
50日を長いと思うのであれば、航空貨物で輸送すれば良いのであり、1-2日で輸送することが出来ます。通関を含めても5日足らずです。
つまり、航空貨物であれば貨物を45日早く現金化することが出来るという事です。
そんな海上貨物と航空貨物しかなかったところに「一帯一路」という第3の輸送路が登場しました。
一帯一路のメリット
簡単に言うと、一帯は陸のシルクロード、一路は海のシルクロードです。
日本と欧州間の陸路輸送は50年ほど前からありました。それは、シベリア・ランド・ブリッジです。日本発の貨物をロシア(当時はソ連)のウラジオストック港を経由し、鉄道に積み替えてモスクワへ輸送するというものでした。しかし、あまりぱっとした成果はありませんでした。今でもなくなってはいないようですが、ほぼ使われていないと言ってもいいでしょう。
何故、このルートを構築したかというとリードタイムの短縮のためです。
そして今、一帯という名称で中国と欧州間の鉄道輸送が始まりました。
このルートは、満州里を経由するものと、烏魯木斉を経由するものがあり、どちらも、海上便よりも早く、航空便よりも安価であるということを宣伝文句にしています。
既に、1990年代初頭に中国の連雲港から欧州向けの貨車輸送はありましたが、「一帯一路」ということで、仕切りなおされたのです。
荷主から、「一帯一路」は、運行に不安がある、運賃が高い、という声を聞きますが、単に運賃比較ではなくSCMやCCCの観点も含めて検討すべきです。
それに、複数の国を鉄道で繋ぐという構築が難しいサービスに初めから120点の期待をする方が間違っているというものです。評論家のようにネガティブなことばかり言っていないで、どうすれば自分に有利に利用出来るかを考えるのが重要です。
物流・貿易研究所では、中国一欧州間の鉄道輸送を行っている長久実業集団有限公司の方と頻繁に情報交換をしています。
興味がある方は連絡をください。これから一帯一路を盛り上げて行きましょう。