自動車業界の人は、FCAと聞くとオランダの自動車製造会社であるフィアット・クライスラー・オートモービルズを思い浮かべるかもしれませんが、
ここで言うFCAはINCOTERMSのFCAです。
十年一昔と言いますが、三昔前にFOBと言っていた取引条件に代わるものということで、INCOTERMS1990でFCAが新設されました。
(FOBは一部の海上貨物用に現在も使用されています)
しかし登場から約30年も経っているというのに、未だに「FCAって何?」と言う人がどれだけ多いことか。
また、FCAを使ってはいるがFOBとの違いを知らないという人も少なくありません。
今回はこのFCAとFOBの違いを考えてみましょう。
まず、FOBでの危険移転の時期は、貨物が本船に無事に置かれた時です。
一昔前までは本船の舷側をかわった時と言っていましたが、今は違います。
そして、FCAの危険移転の時期は指定された場所で運送業者に引き渡された時です。
本船に無事に置かれた時ではないのです。
では、指定された場所とはどこなのでしょうか?
INCOTERMSの貿易条件の後ろには、
場所、住所や地点を明確に記載することとされています。
例えば、FCA Tokyoというものをよく見かけますが、
これは「アウト」です。
何故かというと、場所が明確ではないからです。
Tokyoとはどこを指しているのでしょうか?
それだけでは場所の特定をすることが出来ません。
群馬で製造された機械を輸出する時に、群馬の工場でトラックに積み、関越自動車道で練馬を経由して環八で東京港に行く場合で、世田谷で自動車が横転して、機械が破損した場合の責任は売主?それとも買主? Tokyoでは明確ではありませんね。
こんな風に引き渡し地点が明確ではない場合、売主と買主はもめます。
ではFCA Tokyo CYならどうでしょう。
どの船会社かは明確ではありませんがCYに搬入した時に危険が移転するというのが明確に分かります。
さて、今回の関西を直撃した台風の影響でCYに置かれているコンテナがなぎ倒されました。このコンテナが輸出用で、かつ貨物が積載されていた場合の責任は売主でしょうか、それとも買主でしょうか。
FOB契約であれば、本船に無事に置かれる前なので売主のリスクです。
そして、FCA契約であればCYに搬入した後なので買主のリスクになるのです。
分かりましたでしょうか。
これはFOBとFCAの違いの一つだということを忘れないで下さい。
そのINCOTERMSも2020年に新しいものに変わります。
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