為替条項の導入で日本はどうなるのか 吉か凶か

複数の物流関係者に、今話題の「為替条項の導入」について聞いてみましたが、

『それは財務部門の問題だから、物流では関係ない』と

どの方からも同じような返答がありました。

 

そもそも「為替条項の導入」とは何であるかがわかっていないようでした。

今回この内容を取り上げたのは、旬の話題であることに加え、

貿易に携わっている人にとって為替はとても重要な問題であるからです。

 

ここから先は、為替の話なので、

為替の仕組みを知っている方は、これから先に進まなくて良いでしょう。

 

為替条項って導入した方がいいのか?

NAFTA(米国・カナダ・メキシコ間の自由貿易協定)の再交渉では、米国の強い意向で為替条項の導入を決めました。

米韓FTAの見直しでは、米国は為替条項を導入すると言っていますが、韓国は、そんな話はしていないと言っています。

日本に目を向けてみると、これから話し合いが行われる「TAG(日米物品貿易協定)」では、為替条項は導入しないと日本政府が言っている一方、米国は導入しないと言った覚えはないと言っています。

 

他国を見ると、どうも、為替条項は導入しない方が良いような感じがします。

では、実のところ導入した方が良いのでしょうか、しない方が良いのでしょうか。

 

そもそも、為替条項の導入って何?

各国が輸出競争力を高めるために為替に介入して通貨安の誘導を図るのを、相手国が防ぐ取り決めです。

通貨安ということは、1ドル=100円だったのが、110円になることです。

その逆の通貨高とは、1ドル=100円だったのが、90円になることです。

 

通貨安になると輸出企業が喜びます。

例えば、100万ドルの契約で米国企業と輸出契約を結んだ場合、

上記のような通貨安になることで、輸出者の日本企業は1億円の売上げが1億1000万円になります。

つまり、何をしなくても1000万円余分に儲かるというのが通貨安なのです。

  • 100万ドル x 100円 = 1億円
  • 100万ドル x 110円 = 1億1000万円

 

逆に日本円が通貨安になると米国企業は日本への輸出で不利になるため、

米国から日本向けの輸出が減ります。

 

つまり、日本からの輸出額が増えて、輸入が減るのです。

その結果、米国の対日本の貿易収支が赤字になり、トランプ大統領は面白くなくなるということになります。

 

しかし、為替条項が導入されていれば、米国は日本に対して為替条項を適用しましょうと言って、

米国の輸出が有利になるように、日本円を通貨高へ誘導するでしょう。

その結果、日本の貿易黒字が減り、米国の貿易赤字が縮小するため

お互いに貿易収支が黒字でも赤字でもない均衡状態になります。

 

黒字でもなく、赤字でもなければ、お互いに恨みっこ無しですが、

問題は、米国が、「日本円は通貨安だ!」と判定したら、

日本に有無を言わさずに、強引に円高にもっていくのではないかと考えられることです。

 

実際、ここ数年円安基調にあるので、直ぐにでも何らかの理由をつけて為替条項を発動するかもしれません。

それによって、米国は貿易赤字を縮小することが出来るので万々歳に間違いないでしょう。

 

消費者目線だけで考えると、円高になれば輸入品が安くなるため、うれしいことです。

しかし、日本は輸出国家です。輸出が減れば国力が落ちます。

当然、輸出比率の大きい企業の売上げは下がり、多くの人の給与が減ります。

 

「為替条項の導入」によって、日本の円と米ドルの為替レートを米国が自由に決めることが出来るようになったら、日本は今以上に米国の完全な植民地になってしまいます。

 

ちなみに、2018年10月18日、米国の財務省は通貨政策監視リストの対象に日本を含めました。

 

為替も貿易の重要な要素だということを忘れず、危機感を持って推移を見守りましょう。

 

そのための対策が必要な方は下記まで連絡願います。