危機的状態の東京港のドレイ

 今年の6月27日に『東京港がパンクしている』という内容のメルマガを発信しました。今回のメルマガはそれに関連する内容です。ドライバー不足解消の目途が立っていないことから、今後も更なるドレイ不足が考えられます。いくら貨物があっても、たくさんの船が寄港したとしても、港まで、または港から運ぶ手段が無ければ、貿易取引を行うことは出来ません。

 今回は、ドレイ不足がどのような状況なのかをもう少し深堀してみます。

 

ドレイ?

 読者の皆さんは貿易について詳しい方ばかりではないため簡単に説明しますと、ドレイとは輸出入で使われる海上コンテナを国内輸送することです。英語のDrayageから出来た言葉であり、決して奴隷が語源ではありません。

 

ドライバーの1日

 ドライバーは港からコンテナを出し入れするためにコンテナヤード(CY)に行きますが、CYで2時間も4時間も並ばなければならないことがあります。仮に2時間待つと仮定すると、搬出で2時間、搬入で2時間、合わせて1日当たり4時間も並ばなくてはなりません。それに加えて倉庫でコンテナへ輸出貨物を積み込む時間があります。それが1時間と仮定すると、それだけで5時間を要してしまいます。CYと倉庫間の往復の運送時間も考えると、海上コンテナ1本を搬出入するだけで一日が終わってしまうのです。

 

トイレ問題

 トイレに行きたくなるのは人間の自然な生理現象です。コンテナを搬出入するためにCYで4時間も待つドライバーにとって、トイレ問題は小さいものではありません。

 どの運送業界でも女性ドライバーの活躍が顕著であり、最近では、船舶で女性乗組員が活躍しています。一般のトラックと違い、貨物の積み降ろしを行うことが無いドレイの運転手は、腕力の無い方でも適しているので女性ドライバーが活躍しやすいはずなのですが、実際は敬遠されがちです。その原因は生理現象です。

 

ドレイの数

 東京都トラック協会の資料によると2011年には39,000台を超えるコンテナ輸送用のトレーラーがありましたが、2019年には30,000台弱になりました。25%減ってしまったことになります。一方、東京港で扱っているコンテナ本数は約400万本から430万本に増えています(TEU換算)。つまり、運ぶ物は増えているのにトレーラーは減っているのです。需要と供給で考えると売り手市場のはずです。実際、支払い運賃は高くなっています。しかしコンテナが増加したことで東京港のCYがパンク状態になり、搬出入のために何時間も待機しなければなりません。以前は、一日に何本もコンテナを運送できていたのに、今では、一日に運送出来る本数が減ってしまっているのです。それゆえドライバーの給与も減ってしまうという構造になっています。

 

ドライバーの給与

 少し前になりますが、バブル期の給与は年間500万円から1000万円と言われていましたが、現在では年収420万円ほどと、魅力に欠ける仕事になってしまいました。これでは、ドライバーを呼び込むことは厳しい状況と言わざるを得ません。また、2014年3月時点のドライバーの平均年齢は47才でしたが、2019年3月時点の統計では50才でした。つまり、若い人がドライバーになっていないということがよく分かります。

 

ではどうすればいいのか

 横浜港も同様の状況です。まだマシだった川崎港も、最近では貨物量が増加して来ています。首都圏の貨物に関しては、やはり京浜港近郊の港を使うことを考えるべきでしょう。しかし、横浜より西の港は清水港になるため、東若しくは北に目を向けることになります。

 そうすると、目に入るのは千葉港、鹿島港、常陸那珂湊港区です。これらの港は、いわゆる地方港という事で、寄港本船数が少ないのが実態ですが、貨物を増やすのと、本船を増やすのは「鶏と卵」の関係です。近い将来の東京港の更なるパンクを憂慮し、北関東方面の荷主企業は、これらの港を使ってみてはどうかと思います。

 

今回は東京港に焦点を当てましたが、他の港でも似たような状況です。