もうROEはやめた

■ 高ROE株に資金流入

 これは、2020年1月23日の日経新聞に掲載されていた記事です。

 その内容は、ROEが高い企業は総じて財務基盤が厚く、安定成長できる傾向にあり、また株価が高い傾向にあるというものです。

 つまり、ROEを向上させることで企業の市場価値は向上するのです。

 

■ ROEとは

 『自己資本利益率』のことであり、企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合です。

 ROE=当期純利益÷自己資本 若しくは ROA÷自己資本比率 で算出します。

 ちなみにROAとは総資産利益率のことであり、当期純利益÷総資産(総資本)で算出することが出来ます。

 

■ 伊藤レポート

 平成26年8月に経済産業省が公表した資料に『伊藤レポート』があります。

 ここには、「資本コストを上回るROE、そして資本効率革命のROEを、現場の経営指標に落とし込むことで高いモチベーションを引き出し、中長期的にROE向上を目指す「日本型ROE経営」が必要。「資本コスト」を上回る企業が価値創造企業であり、その水準は個々に異なるが、グローバルな投資家との対話では、8%を上回るROEを最低ラインとし、より高い水準を目指すべき。」と書かれています。

 このレポートが発表されて以降、ROEという言葉が新聞でも一般的になりました。

 

■ ROE/ROAを向上させる物流コスト削減

 伊藤レポートが発表されたのは平成26年です。

 木村は、このレポートに書かれているROEを物流に取り込むことで、物流のステータスをより向上させることが出来ると考え、その翌年平成27年から、『ROE/ROAを向上させる物流コスト削減』というセミナーを一般社団法人・日本経営協会で開催してきました。

 そもそもこの内容でセミナーを行ったのは、これからは物流担当者もROE/ROAを意識する必要があり、また、経営者や経営企画部の方々も、より物流に意識を向けてROE/ROA経営を行うべきであるという考えからでした。

 企業内での物流のステータスを少しでも上げるべく考えたカリキュラムでした。

 セミナータイトルから分かるとおりROEとROAが主な内容ですが、

 参加者の多くは、パンフレットのカリキュラムに記載されていた物流コスト削減という文字が、ROEやROAよりも魅力的に見えたのでしょう。参加者の多くは目先の物流コスト削減にしか興味が無く、ROE/ROAについて興味を示す方はごく少数でした。その傾向は年々高くなってきました。

 おそらくではありますが、毎日の業務に余裕が無いために、ROEやROAよりも目先のことしか追っていくことが出来ないのではないでしょうか。

 参加者の目的とセミナーの目的が合致しないと感じたため、当セミナーは2019年を最後に止めることに決めました。 

 

■ 物流のステータスを上げたい

 多くの物流担当者の方に、ROEやROAを考えて物流を考えてもらいたいと思います。そして、企業経営者も、物流を考える際にROEやROAのエッセンスを含めてもらいたいと思います。それが物流のステータス向上に繋がるからです。 

 

 そして、これからの物流のキーワードはROE、ROAに加えてSDGsです。SDGsをも含めて物流を考えるようにしてください。