トラック事業者に対する国交省の施策
トラック運転者の、長時間労働・低賃金と言われている処遇の改善を図るため、2019年11月から順次、以下の項目が施行されました。その最後の施策が運賃の告示です。
[1] 規制の適正化
[2] 事業者が遵守すべき事項の明確化
[3] 荷主対策の深度化
[4] 標準的な運賃の告示制度を導入
「標準的なトラック運賃」とは
一般にトラック事業者の荷主に対する交渉力が弱いという事実から、ままならない運賃交渉をやりやすくするために国交省が作った標準運賃です。
どうやって運賃が決まったのか
国交省が、全国のトラック事業者の原価データを集計して、適正な原価等を算出したそうです。
次の表は、その一部です(国交省の資料・関東圏のみ抜粋)。
違和感をおぼえるのは私だけではないと思います。
実勢運賃と比較すると、違いが大き過ぎるのではないでしょうか。全国のトラック事業者の原価はそんなに高いとは思えません。もしも、その原価が正しいとすれば、実際に収受している運賃との差は歴然としており、逆ザヤになっていることは間違いありません。これでは、ほぼ100%のトラック事業者は破産しています。
もしも、百歩譲って、国交省の運賃計算が正しいとするならば、「ドライバーがもらえたらいいなと思える給与である、全産業平均を考えて計算しました」と付け加えているのであれば、そのような原価になるのも納得できるのですが。。。
トラック運賃のタリフを見たことがない
トラック運賃のタリフというものが存在しているのを知らない人も多いことでしょう。過去には昭和60年版タリフ、平成2年版タリフ等があり、数年おきに更新されていましたが、平成11年版が最後となりました。それは、平成15年に運賃が届出制になり、タリフが見直されなくなったからです(それまでも毎年見直されるものではありませんでした)。つまり21年間もタリフというものが存在していなかったのです。
平成11年と言えば、大卒の人であれば現在40才を過ぎているでしょうから、物流に従事している約半数の人はタリフに馴染みがないのです。
「標準的なトラック運賃」は本当に標準的なのか
国交省は、これは、あくまでも告示であり強制力があるものではないので、事業者が適切な利潤を確保できるなら「割引するのも自由」だと説明しているそうです。つまり、トラック事業者、荷主ともに、標準運賃を「守るも自由、守らぬも自由」ということです。
そもそも、適切な利潤とはどのくらいの金額若しくは利益率をいうのかが分かりません。今までの給与で生活が破綻していなかった、会社もつぶれなかった。それならば、それが適切な利潤ではないのか、と考えているのであれば、折角告示した「標準的なトラック運賃」は、絵に描いた餅に成り下がってしまうことでしょう。
トラックドライバーの処遇改善のために、そして、これからの若者にトラックドライバーが魅力的な職業であると思ってもらうために、国交省は、過度な値引き競争が起こらないような施策をしてほしいと思うばかりです。
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