5年毎に作成される「総合物流施策大綱」が閣議決定され本年6月15日に発表されました。
1 物流施策大綱の方針
大綱の概要を下記のようにまとめました。極力大綱の趣旨に沿って記載しましたが、筆者が感じた言葉で書いたため、詳細は大綱を読んでください。
- インフラとしての物流の維持と、その機能を十分に活かす
- AI や IoT 等によるイノベーションのデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進
- 物流に従事する労働人口の不足に対する対応とダイバーシティの推進
- 港湾インフラの維持管理と更新
- 地域経済の活性化
- SDGsを視野に入れ温室効果ガスの排出を全体としてゼロにし、また、カーボンニュートラル、脱炭素社会を実現させる
- 地震や気候変動への対応や、輸送機関の事故防止
- 新型コロナウイルス感染症対策と「三つの密」の回避
今までの大綱とは違い、たとえて言えば、机上の勉強だけをしている子が、世間で言われている用語を並べてきれいな言葉で装飾した感が否めません。また、物流のためと言うよりも、これらの言葉を入れておけば、社会的・世論的に受けが良いだろうという観点で作成したように感じました。
2 今後何に力を入れていくべきか
やはり、物流の効率化でしょう。その中でも、物流のデジタル化、自動化やDX化が特に検討すべき課題です。具体的には、トラック予約システムの導入、物流センターの無人化、自動運転、自動配送の導入ですが、これらは国も力を入れており、物流業務の自動化・機械化やデジタル化に向けた取り組みに着手している物流事業者の割合を増やすと表明しているため、補助金が出されることが想定されます。
また、輸配送の共同化ももっと検討すべきです。既にビール業界では何年も前から、「物流分野は競い合うものではなく共同化すべきであり、競い合うべきは商品だ」ということで物流を共同化しています。
食品メーカーの大手が共同で物流会社を立ち上げ、物流の共同化を推進していることを見ても、共同化が物流のキーワードであることが分かるでしょう。
3 物流の地位向上
物流という言葉がロジスティクスになり、そしてSCMという言葉に替わって来てから、物流の立場は以前よりも良くなりましたが、まだまだ物流に対する評価は低く、全産業の下から見た方が早いという位置づけにあります。
そんなことはないと思う人もいるかもしれませんが、地位の低さはトラックドライバーの給与を見ればわかります。トラックは社会の重要なインフラなのに、運転している人の給与は未だに低水準だと言われています。
今回の大綱には次の言葉があります 「物流に関する広報の強化」。
そのためには、経営層が物流を経営戦略の一つに位置付け、物流重視の姿勢を示していくことが重要なのです。経営者の多くは、未だに物流の重要性に気づいておらず、「運んで保管すること」としか考えていない人もいます。是非とも、物流の重要さを広め、物流の地位が向上されるよう、国に主導してもらいたいと思います。