つい先日、日本経済新聞に面白い記事が載っていました。
アシックスとナイキの棚卸資産回転日数の比較です。
- アシックス 155日
- ナイキ 98日
この数値は直近5年間の平均だそうです。
また、売上高はそれぞれ3950億円と4.9兆円と記載されていました。
売上高と棚卸資産回転日数だけを比べてもそれほど意味はないのですが、こんなにも差が大きいとは知りませんでした。
棚卸資産回転日数と率
棚卸資産回転の指標となる言葉に、棚卸資産回転「日数」と「率」があります。これらは、各々次の式で算出されます。
棚卸資産回転日数(期間)
棚卸資産回転日数=棚卸資産 ÷(売上高÷365日)
これは、在庫が1回転するのに何日かかるかを知るための数式であり、数値の単位は「日」です。
棚卸資産回転率
棚卸資産回転率=売上高 ÷ 棚卸資産
在庫が1年間で何回入れ替わっているかを知るための数式であり、値が高いほど在庫の消化効率が良いということです。つまり、棚卸資産が効率よく管理されていることになります。その反面、在庫切れのリスクが高まります。数値の単位は「回」です。
上記に出ている棚卸資産は、一般的に「期中平均」を用います。これは、期首と期末の棚卸資産を足して2で割った値です。
更に詳しく実態を把握するために、次の数値を使用して管理している企業もあります。
- 製品のカテゴリ毎に棚卸資産回転日数と率を算出する
- 売上高の代わりに売上原価を使用して算出する
- 金額ではなく個数で計算する
日本標準産業分類:大分類 | 棚卸資産
回転期間日数 |
棚卸資産
回転率 |
建設業 | 33.87 日 | 10.78 回 |
製造業 | 41.99 日 | 8.69 回 |
情報通信業 | 15.25 日 | 23.94 回 |
運輸業・郵便業 | 3.52 日 | 103.61 回 |
卸売業 | 21.69 日 | 16.83 回 |
小売業 | 26.68 日 | 13.68 回 |
不動産業・物品賃貸業 | 153.30 日 | 2.38 回 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 10.73 日 | 34.01 回 |
宿泊業・飲食サービス業 | 5.47 日 | 66.74 回 |
生活関連サービス業・娯楽業 | 6.98 日 | 52.29 回 |
サービス業(他に分類されないもの) | 11.05 日 | 33.04 回 |
計算式から分かったことと思いますが、回転期間日数に回転率を乗じると、1年の日数である365になります。
棚卸資産回転日数をどう使うのか
棚卸資産回転日数によって在庫を何日分持っているか把握することが出来ます。
アシックスを例に挙げると、155日間新たな生産や仕入れをしなくても、今まで通り販売を続けることが出来るということです。言い方を変えれば、155日分の在庫が、倉庫や店頭若しくはお店のバックヤードに保管されているとも言えます。
ただし、155日を過ぎると販売するものが無くなってしまいます。つまり、棚卸資産が無ければビジネスを継続することは出来ないということです。しかし、受注生産であれば棚卸資産を持っている必要はありません。
棚卸資産とは、製品や商品、仕掛品、原材料、そして貯蔵品を合わせたものです。もしかしたら製品在庫ではなく、原材料や仕掛品在庫が多いのかもしれません。
棚卸資産回転日数を、カテゴリー毎や製品毎に見ることで、商品毎に、売れ筋か死に筋かをより詳細に知ることができます。
棚卸資産回転日数が長い・短い
棚卸資産回転期間が短いということは、棚卸在庫が無くなるまでの期間が短いことと同義であり、それはすなわち商品が早く売上(お金)に変わるということです。
逆に、棚卸資産回転期間が長ければ、仕入れた商品がなかなか売上にならないので、キャッシュフローが厳しいということになります。これにより発生する問題は、黒字倒産です。このようなことにならぬように在庫の管理はしっかりと行ってください。