海上運賃はなぜここまで上がったのだろうか?

 ここ一ヶ月の間に2回、セミナーで今後の海上運賃動向について話す機会がありました。

 

 海上運賃高騰は、商品価格の高騰を引き起こしている原因の一つであり、皆さんの生活を脅かしている要因でもあります。

 では、いつから高騰しているのでしょうか。そして、なぜ高騰しているのでしょうか。

 

海上運賃高騰

 海上運賃は、2020年夏ごろから上昇しています。

 これはコロナ禍によるものだと言われており、それが引き金になっていることは間違いありません。ちなみに、コロナウイルスが広がり始めた2020年の2、3月頃は高くありませんでした。

 

 高騰には色々な要因があります。例えば、コロナ下で旅行に行くことが出来なくなったために、人々の金銭の使い道が商品の購入に向かったというのが、その一つと言われています。

 他には、コロナ禍によって船員の供給力が低下したことも要因だと言われています。乗船しっぱなしであればコロナウイルスから隔離された状態なので、供給力の低下には関係ありませんが、当然休暇は必要です。陸上で休暇中の船員が罹患したことが船員数の不足につながりました。

 船員不足問題は、最近のロシアとウクライナ問題にも関係しています。それは、両国合わせて世界の船員の15%を占めているからです。

 その他には、大消費地である米国での港湾労働者やトラックドライバーの減少、コンテナの製造が貨物量に追い付いていない状況なども、高騰の原因であると言われています。

 でも、そうしたことだけで海上運賃がコロナ禍前の10倍程度にまで上がるとは思えません。

 

海上運賃高騰の発端は

 そもそもこのような高騰が起こったのは、コロナウイルスが広まり始めた時に、世界の海上貨物量が大きく減ったことに起因します。これにより、船会社の収支は著しく悪化しました。コロナ禍前の海上運賃が低かったうえに貨物が減ったことで、それまで何とか生きながらえて来たのに、とうとう耐えられなくなったのです。そこで、船会社は古い船舶の解撤を進め、貨物量と本船積載数の需給調整を行いました。するとその後、先に書いたように貨物量が急上昇したので本船の数が足りなくなり、『貨物>本船スペース』という状態になり運賃高騰に反転してしまいました。

今だから言えることですが、慌てて本船の解撤をしなければここまで運賃が高騰することは無かったのです。とはいえ、コロナ禍は誰も経験したことがないような事態の連続であったため、購買量がこれほど増えることを見通すことは出来なかったでしょうから、船会社が解撤を進めたことを責めるのは難しいと言わざるを得ません。

 

 ただ言いたいのは、海上運賃について考察する際は、本船の解撤や発注の事情も含めて考えなければならないということです。そこに言及している資料が少ないので、あえて書かせて頂きました。

 

 最後に、ここに記載したことの一部は木村の私見であること付け加えさせて頂きます。