パナマ運河100年 後編

日本のエネルギー政策とパナマ運河

現在、このパナマ運河拡張工事は工事代金支払遅延の影響で遅れています。

もしも、予定通りのスケジュールで拡張されないと、

日本のエネルギー政策上も困ったことが起きてしまいます。

日本は2017年以降、米国東海岸からシェールガスを輸入する計画を立てています。

このガスはLNG船という特殊な船舶で輸送することになりますが、

この船舶の横幅は32mを越えるため、

現在のパナマ運河を通行することができないのです。

工事完了が遅れた場合、このLNG船は米国東海岸を出航後、

南米最南端であるマゼラン海峡を通過して太平洋を北上するか、

アフリカ最南端のケープタウン(喜望峰)沖を通過してインド洋を北上しなければなりません。

すると航海日数が大幅に伸びてしまううえ、

航海距離が長くなることで輸送コストが上がってしまうのです。

これでは、せっかく安価なシェールガスを購入できても、

輸送コストを加えると現在の原油輸入コストと変わりないものとなり、

電気料金の引き下げも期待できなくなるかもしれません。

 

コンテナ船とパナマ運河

米国東海岸にはニューヨークやボストン等の港があり、

これらの港にはアジアから、たくさんのコンテナ貨物が輸送されています。

この日本を含めたアジアから米国東海岸向け航路には大きく二つのルートがあります。

一つはパナマ運河を通り東海岸の港に行くルートであり、

もう一つはロサンゼルスやオークランド等の西海岸の港でコンテナを降ろした後、

鉄道に積み替えて東海岸へ輸送する方法です。

後者の場合、パナマ運河を航行するよりも東海岸へ早く到着することができますが、

運賃が割高になってしまいます。

また、コンテナ船から鉄道へ積替える際や鉄道輸送中の衝撃による

貨物へのダメージが懸念されるため、

機械貨物や精密機器はパナマ運河経由で輸送する方が良いでしょう。

 

参照   : パナマ運河100年 前編

 

貿易コンサルタント 木村徹