脱税 前編

平成27年2月27日、東京税関から「輸入冷凍豚肉に係る関税ほ脱事件を告発」

というニュースが公表されました。

 

これは、群馬県の食肉輸入販売業者が平成23年10月頃から平成25年2月頃までの間、

カナダ等から冷凍豚肉を輸入する際に、

偽って作成したインボイス等を税関に提出することで関税額を過少に申告して

合計約11億2749万円の関税を免れたというものです。

 

しかし、これは驚くほどの脱税額ではありません。

平成26年12月には千葉の豚肉輸入業者が合計17億4919万3000円を免れていたり、

平成18年には関税合計約104億8400万円を免れていた関税ほ脱事件によって、

食肉卸販売業者らが関税法違反で東京地方検察庁に告発されています。

 

そのほかには、誰もが知っている日本を代表する某商社が

平成17年にデンマーク産の冷凍豚肉を実際よりも価格を高く申告することで、

差額関税約42億円の支払いを不正に免れているという事例もありました。

 

これらは全て豚肉の輸入に絡む関税ほ脱事件です。

豚肉の輸入は脱税天国なのでしょうか。

恐らく、摘発されていないことでビクビクしている企業や、

喜んでいる企業もまだたくさんあることでしょう。ではなぜ「豚肉」なのでしょう。

  • ほ脱事件とは、脱税事件のことです。

 

ヒントはこれらの事件記事の中にあります。

それは「実際より価格を高く申告する」です。

一般的には、輸入価格を実際よりも高く申告すれば関税額が高くなるため、

脱税を企てるのであれば実際よりも低く申告するはずです。

 

ここに、豚肉輸入の特殊性があるのです。

 

豚肉の輸入は「差額関税」という関税方式が適用されます。

これは、豚肉の輸入価格が安い場合に、

その輸入価格と一定水準の価格との差額を関税として課すものです。

一方、豚肉の輸入価格が高い場合には、無税又は低税率の関税が適用されます。

 

これにより、輸入される豚肉の価格と輸入関税額の合計額が一律化されるのです。

 

参照   : 脱税 後編

 

貿易コンサルタント 木村徹