ニュージーランドはTPPの会合でなぜ怒ったのか? 後編

『バターの生産量と輸入量』

ここ数年、日本ではバターが不足ぎみです。

スーパーマーケットでもバターの棚が空であることが多く、

今冬も品不足になるだろうと言われています。

最近15年間のバターの国内生産量と輸入量をグラフにしてみました。

このグラフから、生産量は年度によってムラはありますが、

傾向としては毎年減っていることがわかります。

特に直近5年間の減少度合いは著しいと言えるでしょう。

バター生産量

注:一般社団法人Jミルクのデータを筆者が加工

 

『バターの輸入関税』

これだけ生産量が減っているにも関わらず

輸入が増えないのは何故かと言うと、

輸入関税率にその原因があることがわかります。

 

輸入関税率は、その商品がどの国から輸出されたかによって違いますが、

例えば、脂肪分が85%以下のバターを、

独立行政法人・農畜産業振興機構等がNZから輸入する場合は35%です。

しかし、その他の者が輸入する場合は

29.8%+985円/Kgとされています。

 

輸入価格を見てみると1000グラム当たり

CIF価格で平均500円前後です。

これに関税を加えると、

機構が輸入する場合は1000グラム当たり675円ですが、

その他の者の場合は1634円になります。

この価格を、国内産バターの一般的な販売価格である

200グラムあたり400円と比較してみると、

同じ量で機構では135円、その他の者では330円になります。

 

しかし、これはバターが日本に到着したところまでの金額なので、

これに、国内輸送費、倉庫費用や流通加工費等の

物流費を加えなくてはなりません。

バターの場合温度管理が必要なことから、

それらの費用は通常倉庫よりも高くなります。

そして、一般管理費や利潤も含めると、一般小売価格は機構の場合で、

国内産のものよりも少し高いくらいになるでしょう。

その他の者の場合には高くなりすぎて一般の人には売れないと思います。

 

バターがないことで死活的に困るのは洋菓子業界ですが、

菓子メーカー、製パン、外食産業、ベーカリー等も含めて、

生産が止まるような事態にはならないようであり、

そのしわ寄せは一般消費者に来ているようです。