ミニマム・アクセス米と保管料 前編

ミニマム・アクセス米?

TPPの報道に際し、

「ミニマム・アクセス米」という言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、

これはなんなのでしょうか。

 

1993年(平成5年)のウルグアイ・ラウンド農業合意によって、

日本はこれまでほとんど輸入していなかった品目に関して、

各国から最低限の輸入機会(「ミニマム・アクセス機会」)を

提供することが求められました。

「ミニマム・アクセス米」とはそれらの品目に該当するコメのことで、

枠内の数量は無税で輸入するというものです。

しかし、無税で輸入されたコメを国内市場で販売すると、

国産米よりも安価になり、国産米の売買に悪影響を与えてしまうことから、

日本では一部例外(※)がありますが、国が輸入する方式を採用しています。

つまり、民間企業はコメを無税で輸入することが出来ないのです。

民間企業が輸入する場合には1kgあたり341円の関税を

納税しなければなりません。

※ SBS方式:売買同時方式と言われるもので実施的な民間取引。

 

日本では最近はコメの価格が下落しており、

10Kg-3,000円ほどで購入することが出来ます。

民間企業が輸入するコメは関税だけで

10Kgあたりで3,410円にもなってしまい、

これにコメの価格、物流費、諸費用と利益を含めると、

国内産よりも高くなってしまうことから、

輸入するのは無駄だという仕組みになっています。

これは、国内のコメ農家を守るための措置です。

 

ミニマム・アクセス米の用途

ミニマム・アクセス米の用途は、

主に、加工用、援助用、飼料用(平成18年度以降)であり、

これらが全体のほぼ80%を占めています。

飼料に使うという用途は在庫が増加したことによる措置ですが、

飼料用米は著しく安いため多額の財政負担が強いられています。

価格例を挙げると、輸入価格が1トンあたり70,000円とすると、

飼料用米の販売価格は同30,000円ほどです。

飼料用として50万トン販売した場合、国の財政負担額は200億円になります。

税金による負担ということです。

また、海外の国々への援助に活用した場合、

輸入価格に輸送費である1トン当たり20,000円を負担し、

50万トン援助すると、450億円の財政負担になります。

 

ちなみに、2015年2月20日の日本経済新聞記事によると、

1995年度から2013年度までの19年間で

累計2,723億円の損失が生じているそうです。

 

貿易コンサルタント 木村徹