どこまで行くのか貿易戦争。 得する人は?

 米中貿易戦争は今や皆が知るところですが、米国は、対中国以外にも、日本、中国、EU、カナダそしてメキシコに対してアルミは10%、鉄鋼は25%の高率の関税を課しています。

 これに対して、カナダやメキシコは理不尽だと主張しており、メキシコは米国に対して報復措置を検討しています。

 その他にも、米国は航空機への補助金問題でEUと揉めていますし、不法移民問題で対立しているメキシコにも中国同様に追加関税の発動を検討しています。

 

お互いを尊重すること!

 米国は、中国政府が企業に補助金を出しているのはままならないことであり、これを止めるように中国に要求しています。中国経済は民主化していますが、もともと民主主義と共産主義の思想の違いが根底にあるため、共産主義である中国による特定企業への補助金が良くないと米国が言うのは、つまるところ共産主義が悪いと言っていることになってしまうでしょう。しかし、米国もボーイング社に補助金を出しているのですから、その言い分も気になるところです。

 中国としては国家の主権について他国から干渉されることに対して了承は出来ないでしょう。反対に、米国が中国から、おたくも共産主義になりなさいと言われたらどのような反応をするでしょう。

 

仲良くしよう

 どちらが良い悪いと言いたいわけではなく、両国がお互いの立場を尊重しなければ、この消耗戦の終わりは見えないということです。例えば、中国は米国に対して、『片手でこん棒を持ちながら交渉されたのでは、まともな交渉は出来ない』と言っています。それもそうだなと思いました。

 

iPhoneは?

 消耗戦は、すでに行き着くところまで行っており、米国は、中国への製造依存度が高いノートパソコン、スマホ、玩具までにも、高率の関税を掛けると言い始めました。ちなみに、米国で現在約1000ドルで販売されているiPhone XSは16%も高い1159ドルになるだろうと言われています。

 

誰が得するのか

 では、米国による世界中を相手にした貿易戦争でどこが得をするかと言うと、どこも得をしないと言うのが結論です。それは、多くの商品のサプライチェーンが複数の国にまたがっているからです。例えば米国でiPhoneが売れなくなれば、中国での製造数が少なくなります。すると、その部品を製造している日本、台湾、韓国等の製造も減るからです。

 

誰が得するのか

 強いて言えば得をする国もあります。それは、衣料品ではベトナム、インドネシア、カンボジア、インドなど、電子機器なら台湾です。また米国向け玩具のほとんどは中国で製造されていますが、構造が複雑でないものならば、それらの国への製造移管が進むでしょう。

 

日本はどうなのか

 来年の選挙に向けて良いパフォーマンスを見せなければならないトランプ大統領は、当然のごとく日本にもプレッシャーを掛けてくることが容易に想像できますが、日本は日米貿易交渉(TAG)を行う必要はないと言っても過言ではないのです。なぜなら、CPTPP(TPP11)と日欧EPAで、既にいろいろな物を安く購入することが出来るようになったからです。

 実際、EPA発効後、牛肉はカナダと豪州からの輸入が増加し、米国からの輸入は減っています。

 しかし、アルミや鉄鋼の関税率をもっと上げるぞとか、日本のアキレス腱である自動車に対して高関税を掛けるぞと言われたら、米国の求めに対してNOと言わない日本は、抵抗することなく、あるいは抵抗するふりをしてからOK、OKと米国からの多くの要望を受け入れるのではないかと思います。

 

その時のためにEPAについての知識を高めておかなければなりません。

物流・貿易研究所でもEPA関連の問い合わせを受けております。まずは、お気軽にご連絡願います。